2006-08-01から1ヶ月間の記事一覧

「こころ」まで、そして「道草」「明暗」

「ありえたかもしれない自分の自殺」までを表現することで、はじめて漱石はいつわりなく自己を眺めることができたのではないか。それが「道草」となった。「道草」が弾みとなって、漱石はどうにもならない他人たちが交響する世界を描き出した。それが「明暗…

ゲド戦記

少年アレンが死の不安にさいなまれて父親を殺すのは、まさしくフロイト的な父殺しの主題に他ならない。父親を殺すことで、アレンは、自分に死をもたらしうる有力な要因を排除したのだ。ここで父親から剣をうばうのも、実にフロイト的で、この剣が終盤まで鞘…