2009-03-01から1ヶ月間の記事一覧

資本主義とプライド

「ジェームズ・ボンド公式DVDコレクション」の「ロシアより愛をこめて」を読んでいたら、ショーン・コネリーが「ボンドを演じることは資産だ」と発言していて、この本の文章は全体的にこなれた日本語ではないから、ここの部分も直訳なのだろうが、かえって西…

『フロスト×ニクソン』

確かに面白い。しかし、ニクソンが大量虐殺の犯人だ、とフロスト側のブレーンが叫ぶのを聞くと、ウ〜ンと唸ってしまう。両者が戦争をおこして、大量の死者が発生した場合は、双方の戦争主体の責任だろうと思うのである。片側だけの責任であるはずがない。ぶ…

当時の列車事情

チャップリンの短編「給料日」は、花袋の短編「少女病」が書かれた十数年後に発表された。映画だから誇張はあるが、列車から押し出される様子は、この動画の五分半過ぎから見ることができる。甲武線は、「少女病」のすこし後に、中央線に名称変更する。http:…

迂闊でした

こういう本が出ていたんですね…。少女病作者: 田山花袋,藤牧徹也出版社/メーカー: 青山出版社発売日: 2008/12メディア: 単行本購入: 1人 クリック: 5回この商品を含むブログ (23件) を見る

『ウォッチメン』

エリートこそ世界を必要としているのだ。下層民は、世界ではなく現実に対峙する。成り上がりは、手早く世界を知りたくてウズウズしている。つまらない世界のからくりである。「神」が死んで、もう百年たつのだから、「世界」も「指導者」もそろそろ死んでい…

なんだかいつのまにか分かるようになってしまった…

『ミスター・グッドバーを探して』。原題は同じくルッキングフォーで、見る、わけである。主人公が妄想や夢を。英語ってこういうのはそっけない。見るというのは現実を見るとはかぎらないわけだ。現物を見て、ろくでもないイライラしているだけの大学教授を…

『ブタがいた教室』

わりと好意的な評が多いようだが、そうか?終盤で、子供たちが合唱するのを見て、はっとしてしまった。私たちは、大人は、歌を歌わないのに、子供に歌わせている!私たちが、社歌や国歌を合唱しないのに、子供たちに校歌を合唱させて、それを目を細めて眺め…

「容色」

容姿の女性らしさを「色」と表現する日本語は面白い(花袋の「少女病」にもある表現だ)。英語でカラーといっても、せいぜい「顔色」までだ。色の好みというのはとりとめがない。「白黒はっきりさせる」わけにはいかない。

追及の意味の「突っ込む」

なんとこれも「少女病」にあるのだ。「突っ込みを入れる」となると、もっと時代がくだるのではないかと思うが…。突っ込んでくるから、つまりは遠慮がないわけである。「つっこめー」とは「遠慮するなー」ということだ。ことさらに翻訳すると、いやはや、日本…

『失われた肌』

「男の映画」の傑作。主人公はイケメンで、小才が利く男なのだが、こういう男がふと出来心で離婚して生活をあらためてみたらどうなるか。こういう男はけっこういそうだ。自分で自分を律することができないから、逆境に遭遇するとすぐ切れるし、生活が荒れて…

『ロシアより愛をこめて』

前作から予算が倍増したそうだけど、あまりそうは見えないのは、2009年の目で見ているから仕方ないか…。イスタンブールの地下をボンド一行が逃げる際にネズミの大群に遭遇するシーンは、『最後の聖戦』におけるベネチアのカタコンベでジョーンズ一行がネズミ…

『ノーパン通勤 脱がせて』

高校を中退して、中古レコードショップのバイトをしていた主人公は、OLの愛人をこなしながら気楽に生活しているのだが、満員電車で痴漢をする悪癖があった。バイト生活の片手間にDJを目指したりしているのだが、半端な入れ込みようで(DJセットを床において…

『身も心も』

関谷善彦がまねする岡本良介の仕草(タバコにパイプをつける)が面白い。テーブルにパイプを立てて、そこにタバコをつきたてる。フロイト的な連想もはたらく。謝国権というのは知識のうえでしかしらない(けれど字面は空で出てきた)。私はダイヤグラムグル…

小谷野さん

中村うさぎの観察のほうが普通ですよ。関係を持ったら結婚をせまるのって、中上級のサラリーマン階級だけじゃないですか。そういう人たちは数の上では少数派ですって。ピン芸人というのは、ピンからキリまでの「ピン」が誤用だか転用だかした、ひとりで活動…

『ドクター・ノオ』

宵闇にまぎれてジャマイカ人の暗殺グループがボンドを狙うが、通りがかった車のヘッドライトに遮られて、暗殺を諦めるシーンがある。ボンドが状況を与り知らぬままに始まって終わるシーンというのは珍しい。この後こういうシーンは発想されなくなっていった…

いつの現在が現在か

いつの現在が本当の現在なのか。視覚効果の急激な発達をみると、では『駅馬車』が本当の映画なのか、それとも『アラビアのロレンス』か、あるいは『2001年宇宙の旅』か、『未知との遭遇』か、『マトリックス』か、どの現在が本当の現在なのか。

することのさらにすること

であることとすることが対立するのではなかった。であることとはすることを持続することなのだった。ある者がすることを持続していることが、されている者にとって、であることに見えるというわけだった。

女を軽んじる

源氏物語の注釈で訳者がカーセックスの話をしていて、ふと『みんな〜やってるか』のことを思い出す。訳者はカーセックスのことを、軽く見ている女を誘ってする行為のことだと思っているらしくて、ちょっと勉強になった。私は自動車をもっていないのでそうい…

『ゴールデンアイ』

007

まさかゴールデンガンとゴールデンつながりというわけではないだろうが、『黄金銃を持つ男』の設定がアレンジされて流用されている。低空で侵入した孤島の地下に秘密基地があるのや、ボンドとくらべて「血統」が劣るライバルがボンドに挑む設定などがそう。…

ブロスナン以降の007監督たち

007

『ゴールデンアイ』と『カジノ・ロワイヤル』を監督したマーティン・キャンベル(1940年生)と、『ダイ・アナザー・デイ』を監督したリー・タマホリ(1950年生)はニュージーランド出身。イギリスの旧植民地出身なので、このあたりの縁はまあわかりやすい。…

思想という悪霊

コスタ-ガブラスの『背信の日々』と『ミュージック・ボックス』を見返す機会があった。『Z』から『斧』まで、信念や思想が行動に結実する過程を冷酷に観察する作家という印象がある。『斧』で主人公が、人を殺したあとに混乱と興奮で震えがとまらなくなるシ…

『ワラッテイイトモ、』

VHSを借りて、見て、感心していたら、とうの昔にユーチューブにあった。タモリがテレビから話しかけてくるパート(この動画の三分半ころから)が好き。よく作ったなあ…。ある意味青春映画の佳作である。

帚木

雨夜の品定めのシーンで頭中将がかたる女が印象に残る。かいがいしいふるまいにあぐらをかいた中将が顔を見せぬ間におちぶれて行方不明になってしまった孤独な女。家が荒れる、庭が手入れをうけずに草木が生い茂ることが零落の象徴として描かれて、同様のこ…

普遍的な問題

猟奇の心が欠けている、あるいは、猟奇の心に支配されている、この問題は、もしかしたら、人類に普遍的なものなのかもしれない。とくに現代に限ったことではないのかもしれない。観察がなくて理論だけの支配者、目の前の現実がすべて正しい一般人。そのギャ…

『ユア・アイズ・オンリー』

007

007 ユア・アイズ・オンリー アルティメット・エディション [DVD]出版社/メーカー: 20世紀フォックス・ホーム・エンターテイメント・ジャパン発売日: 2006/11/22メディア: DVD クリック: 12回この商品を含むブログ (3件) を見る『ムーンレイカー』からずいぶ…

猟奇には論理がない

嘘がないものにはすがすがしさを感じる。とはいえ嘘がないものは、だんだん退屈になってくる。乱歩が、会話に退屈になってくると、会話の相手をいろんな手段で殺す空想をはじめて退屈を紛らわすという話を、エッセイに書いていたと思う(題名失念)。まさに…

萌えてるひとを見て、ふつうの人が異様に思う理由は…

ジョジョ第五部のドッピオを見ているような気になるからだろう。小説家はダイアローグにすることで異様さを回避するが、しかし会話だけでも異様さは拭えないものなのである。セリフにみあったキャラクターの外面描写をおぎなうなりして異様さを回避しなけれ…

国家あるいは権力。世界を体にみたてた場合の、脳の似姿。

そういえば外部世界には脳がない。世界は人になにかを要求しない。ないものをあるふりをして人々が扱うことで権力が生成されるのではないか。そしてその権力も雲のようなもので、近寄ってみたら消えてしまう。まつりごとや祭祀には、実体がない。雲のような…

『花々の墓標』

V章にはいってからのそれまでの流れからの急変ぶりにとまどう。ずいぶん小説小説していて、おもわずうかぶ眉唾な印象を拭えない。47ページの考え方など、ずいぶんあまえたことを言っているなと思ったが、著者は専門職の家に生まれて姉は音大中退、自分は東大…

『消されたライセンス』

007

消されたライセンス (デジタルリマスター・バージョン) [DVD]出版社/メーカー: 20世紀フォックス・ホーム・エンターテイメント・ジャパン発売日: 2007/08/25メディア: DVD購入: 1人 クリック: 16回この商品を含むブログ (4件) を見るむかし橋本治が『’89』…