2010-10-01から1ヶ月間の記事一覧

『Never Let Me Go』のGo

そういえば死んだことを映画では「ヒーイズゴーン」と言ったりする。「ゴー」という言葉にはそういう意味もあるのだ。去られる寂しさではなく、去らなければならない寂しさ。『わたしを離さないで』というのは、まさに絶妙な訳であって、「はなさないで」と…

『わたしを離さないで』と『レギオン』

どちらも居眠りしてしまったので、作品まるごとの評価は下せない。しかし、ちょっと思ったことがある。私たちはいつか死ぬことを知っているのに、なぜか『わたしを離さないで』の臓器提供者のような境遇を憐れむのである。よく考えたら不思議なことである。…

再生「産」

『冷たい雨…』の終盤で、広場のテーブルで憩う組織のボスの前にドレスの女が出てきて媚態をふりまくシーンがあって、女は臨月間近なのにボスははじめはそれに気づかない。映画ならではのシーンである。このシーンは映画冒頭の、ボスの愛人が彼を裏切って男と…

ある肉体の社会的属性を、殺害することでフィックスする

『冷たい雨…』を見ていて強く感じたのは、そういうこと。生きている人間には無数の意味が付着しうるのだ。偶然と、それに付随した仁義を重んじて、主人公たちは組織のボスに反抗する。主人公らのグループは不思議な無常観に浸されている。主人公たちの行動原…

『冷たい雨に撃て、約束の銃弾を』

なんだか頓知のような展開。記憶と復讐の関係にせまった着眼点は面白い。記憶喪失の白人の男が、識別のためにポラロイドカメラで撮った写真を持ち歩いている。人種が違うと個人識別が難しくなる傾向を、アジア人の側から皮肉に指摘したようでもある。多くの…

日記

またもやフレッドクリスマンで来る人が増加した。私はその番組を見たことがないがよほどクリスマンに興味をそそるようにできているのだろう。

う〜ん

http://twitter.com/kokada_jnet/status/28895008543 これだとまるで若い頃の筒井は反権力で、勲章なぞもらうものかとうそぶいていたみたいに聞こえますが、別に筒井にはそんな思想はなかったのと違いますか。マスコミこそあらたな権力というのは、筒井の初…

マット絵とCG

まだ若い頃の庵野秀明が『火垂るの墓』に参加して、力作の絵を仕上げたら、監督の高畑勲は非情にもその絵をシルエットとして真っ黒に塗りつぶしてしまった、ということがあったらしい。せっかくつくった物も、映画の効果を優先して平然とつぶす。そういう判…

アバター

うかつなことにいままで知らなかったのだが、『アバター』はビスタサイズが正式画角で、劇場公開のシネスコサイズは「トリミング版」なのだそうだ。しかし想像以上に「実物」が画面に残っている様子である。作品よりも、よほどメイキング風景に興味があるの…

ザ・タウン

アバターを観た時に予告編をやっていて、映像に『ダークナイト』ぽさを感じて、同じ撮影監督なのかと漠然とおもったが、しらべたらそうではない。まさか覆面強盗というだけで似ていると思ったわけではないのだが。

アバター

去年はスクリーンに寄り気味の席だったので、今年はすこし離れて観てみた。去年の第一印象はあまり変わらず。有難味を感じない。映画ではなくて、アトラクション映像としか思えない。よく考えたらSFじゃなくてオカルトなんだよな。なんだ、あのエイワとか魂…

三四郎

広田先生のあたらしい借家に引っ越し作業の先発隊として入った小川三四郎は、なにをするでもなくぼんやりしている。そこへ里見美禰子があらわれて二人して家の掃除をはじめる。…なんだかこういうシーンをまえにどこかで読んだな。三四郎が美禰子と関わるシー…

漱石に手紙した少年

むかしポプラ社は中学生向けとして『こころ』をポプラ文庫で出していた。その解説に新聞連載中の『こころ』について質す手紙をだした少年がいた旨の記述があって、筆者は不覚だが話は印象深く、同じ話をいま柴田宵曲『漱石覚え書』にみつけた。有名な話だっ…

三四郎

私は『三四郎』を読み出すたび途中で放り出していて、そのことを『四畳半神話大系』でひさしぶりに思い出して、こんどこそちゃんと読まねばと思い手をとった次第。冒頭の「あなたはよほど度胸のない方ですね」の女、真偽はわからねど、夫が満州で音信不通に…

クリフハンガー

昨日テレビでやっているのを眺めたのだが…。遭難者を救助できなかったことがトラウマになっているスタローンが、あらたな救助のオーダーにしぶしぶながら応えてロッキー山脈にのぼると、不時着した悪者たちが待ち構えていて、悪者たちが空から落とした札束の…

どうもな…

日本人の脳に主語はいらない (講談社選書メチエ 410)作者: 月本洋出版社/メーカー: 講談社発売日: 2008/04/10メディア: 単行本購入: 1人 クリック: 34回この商品を含むブログ (26件) を見る脳機能局在論を言語学にこじつけた産物としか思えない。日本語使い…

「形式ばる」

まだ『日本人の脳に…』を読み終わらない。英語は形式的で日本語はあまり形式にとらわれない。そういう話なのだが、しかし英語使いだって「リアリィ?」とか「ファンタスティック!」とかは言うのである。ヨーダの「メイザフォースビーウィズユー」だって、ち…

川端は芸術家

凡手なら「私が縄梯子に捉まろうとして振り返った時、なにかを言おうとしたが、それも止して、もう一ぺんただうなずいて見せた。たぶんさよならを言おうとしたのだろう」などと書くだろう。肝心の時にするりとリアリズムを離れる川端であった。

慌てるな…

日本人の脳に主語はいらない (講談社選書メチエ 410)作者: 月本洋出版社/メーカー: 講談社発売日: 2008/04/10メディア: 単行本購入: 1人 クリック: 34回この商品を含むブログ (26件) を見る149ページで川端の伊豆の踊子を例にあげて、複文の後半の主語が前半…

だから「埶術」ですって、小谷野さん

http://d.hatena.ne.jp/jun-jun1965/20101017 芸はウンであってゲイではないという議論をするなら、藝だっておかしいのですよ。私の旺文社の漢和辞典をどうも私は誤読していたようで、埶+芸(くさぎる)→藝→芸(現行)ということらしい。ウィクショナリーは…

国交途絶幾星霜修交再開秋将到隣人眼温吾人迎北京空晴秋気深

国交途絶シテ幾星霜修交再開ノ秋(トキ)将ニ到ラントス隣人ノ眼ハ温ク吾人ヲ迎エル北京ノ空ハ晴レ秋気ハ深シ かな…。日本語で書いた文章からひらがなを抜けば漢文に逆戻りする、わけはない。たしか昔もどこかで見て笑った覚えがある。マサニイタラントスは…

再読文字を読み下す文化が廃れた

なにも「須く」だけが、誤用されてきたわけではないのだ。日本文化から再読文字を読み下すセンスが衰えたのだ。「宜しく」も誤用され、「ならでは」も誤用されているのだ。再読文字に限らない。たとえだが、私はたまに「リンゴとミカンを」と書いた後、気に…

現代すべからくは「すべて」の高級表現では、ない!(義務のタイムスパン)

なにを高級とするかの定義にもよるが…。どうも同じようなことで考え込んだ人がほかにもいた模様である。 http://d.hatena.ne.jp/sci98/20080925#1222356859サイ98さんは、現代すべからく=「当然の意」説をとなえていて、はてなキーワードの執筆者氏と同じよ…

再読文字たち

漢和辞典を読むと意外に親しい文字が再読文字だったりするので驚く。「宜しく」なども、読み下しの際は「宜しく〜べし」なのだ。なにも「須く」だけではない。私たちは「宜しく」も誤用していたのだ。蒸し返しになるが、現代すべからくは「すべて+しかるべ…

しかるべく すべからく あしからず(「すべからく」誤用の研究)

その0。すべからくはかつては名詞だった。「すべきこと」という名詞であった。時代が下って副詞になった。 その1。「このホテルの部屋はすべからく埋まっている」「あそこのリンゴはすべからく赤い」などは、すべからくの誤用である。とはいえ、もともと「…

「救出」

「きゅうしゅつ」と発音できない。「きゅうしつ」になってしまう。この「し」は、「し」とも「す」ともつかない音なわけ。

『ときめきに死す』

押井守の本で紹介されていたので見てみた。なんだか藤子Fの『ウルトラスーパーデラックスマン』を思い出したのである。藤子のマンガの小池さんはUSDガン細胞に冒されて吐血して死ぬが、こちらの映画の工藤は自分で手首を噛み切って失血死する。批評意識をも…

回顧と気の病(佐藤亜有子「死の花嫁」)

文藝 2010年 11月号 [雑誌]出版社/メーカー: 河出書房新社発売日: 2010/10/07メディア: 雑誌購入: 2人 クリック: 21回この商品を含むブログ (12件) を見るたまたまこれを読む前日の夜中に、中川信夫の『東海道四谷怪談』を観ていたので、偶然なのだが、不気…

「チャージマン研!」

字面は前に見た気がするが、マンガ研究会がどうこうするなにかなのかと思った。1970年代前半のテレビアニメなのだそうだ。 要するに精神病院にマッドサイエンティストがいて、その妄想に悪者の宇宙人が手を貸したということではないのだろうか。「精神病院で…

「ならでは」

日本民族ならでは分からぬ微妙な味であろう。(日下実男『海洋文明学入門』現代教養文庫 昭和51年) そうそう、「ならでは」は省略形だったのだ。「すべからく〜べし」の後半が廃れて、「すべて」の高級形と誤解されて生き残ったように、「ならでは〜ぬ」の…