2010-11-01から1ヶ月間の記事一覧

しかし、私は小林信彦がわりと好きなのである

かれ独特のいじけ感覚を好くか嫌うかで、小林への評価は分かれるのだろう。小谷野さんが『うらなり』に猛反発したのは意外だったが、しかし、『素晴らしい日本野球』で小林がひきあいにだした批評家(小林の処女出版『虚栄の市』をけなした)の記述を読んで…

犯罪者の気持ちが、「わかる」

これは記憶がさだかでないのでまちがっている可能性があるが、かつて江藤淳が永山則夫の気持ちがわかると言ったそうなのだ。しかしウィキペディアをながめると、江藤は永山の日本文藝家協会入りに反対したとあるので、永山ではない別の人物(犯罪者)かもし…

『発語訓練』のころ

小林信彦の芸人評伝を愛読している友人が、しかし小林の小説のほうはつまらないと決まり文句のようになんどもくり返すうちに、ふつふつと小林への関心が再燃して古い文庫本を買ったのである。『素晴らしい日本野球(「発語訓練」改題)』というのをぱらぱら…

ホンネのネと、ネクラのネ

根暗というのは、表向きはあかるくてしかし根は暗いというタモリの造語だそうだが(こういう考証をはじめると、どうも小林信彦の忍び笑いが聞こえてくる気がするのである)、造語だけに、定着しきるまえに、言葉の誤用というか別語同音素との連合が起ってし…

アフターダーク、さらに

http://twitter.com/tonton1965/status/7837265447362560 これはちょっと違うと思うのですが、要するに左翼や心情左翼は、小林が登場したとき、一瞬だけ本気で期待してしまったのですよ。だから、だからこそ、いまでも攻撃しているのですよ。『ゴー宣』はじ…

アフターダーク

小谷野さんとツルシ元編集長のやりとりを、私はちょうど『レフト・アローン』の復習として受け取ったのだった。ふと思うのだが、宅八郎が切通理作の電話番号を誌面にのせて、しかし何も起らなかった場合というのを考えてしまうのだ。おととい見た『パトリオ…

『羊たちの沈黙』

5年くらい前にみた時は、起っていることの凄惨さに幻惑されていたが、これは視線の映画でもあった。『レッド・ドラゴン』の秀逸な設定(犯人がある職業に従事するせいで被害者の情報を「見る」)を、監督のジョナサン・デミはさらに映画全体に拡張している…

『パトリオット・ゲーム』

1991年の湾岸戦争の翌年に公開された映画だけあって、遠く隔たった地域での殺戮風景を情報機器を利用して快適なコントロールルームからモニタリングするシーンが山場として用意されている。ハリソン・フォード扮するライアンは自らの「闘争」の帰結にすぎな…

見栄えよく、黒々

ユーチューブで朝丘雪路がでるアデランスの昔のCMを見た。http://www.youtube.com/watch?v=VnfpRT5eNds6:00くらいからはじまるやつである。あっと思ったのは、カツラがはげかくしなのは今と同じなのだが、このCMでは、カツラがその場でだけ通用すればいいも…

ベリコフスキーの体温

ベリコフスキー(という表記が好きなのだ)の『衝突する宇宙』のなかで、ベリさんは、マンモスの氷漬け死体があることを、急激な寒冷化、天変地異の証拠として読者に印象づけようとしているけれど、かえってベリさん自身の生物の知識のなさを私たちに教えて…

悪臭恐怖と被害妄想

じっさいに体臭がある人でも、じっさいに陰口をたたかれている人でも、悪臭恐怖は悪臭恐怖だし、被害妄想は被害妄想である。本当に被害にあっているのだから自分のは被害妄想ではないといいはられても困る。

意識と無意識の関係

意識にはじつははじめとおわりがなくて、懸案とその解決、解決によって得られた信念、懸案にまでいたらなかった伝聞、あるいは経験などが、そのなか(意識のなか)をうごめいている。養老孟司が無意識とは身体のことだとのべたことがあるけれど、たしかに身…

「上から目線」

http://d.hatena.ne.jp/jun-jun1965/20101118 そういえば「上からものを言う」という表現がありました。「上からものを言う者の視点」が、転用や誤解の果てに「目線」という演劇用語をとりこんだのではないか。かえって「目線」という表現に以前からなじんで…

やっぱり、「セックス」って口に出しづらい?

ある人と話していて、その人が「ジェンダー」という語を、「セックス」の意味で使うので、(ま反対やん、と)最初とまどったのだが、やはり「セックス」って言うのは気恥ずかしくて、はばかられるものなのだろうか。まさかジェンダーをセックスの穏当な言換…

なぜエリートは愛国心をもたねばならないのか

http://d.hatena.ne.jp/jun-jun1965/20101115 なんだかにやにや笑いがおさえられない。たまたまここ数日枕頭の書にしているのが、新・中国人と日本人―ホンネの対話作者: 林思雲,金谷譲出版社/メーカー: 日中出版発売日: 2010/11/01メディア: 単行本購入: 1人…

『レフト・アローン』

第2部。偉大なる独裁者も、大衆を牽引する前衛党も、その輝きを失って、そして…。呉智英や吉本隆明の論敵という認識しかなかった津村喬がでてくる。津村と絓秀実の対談を中断するかたちで、現在の左翼状況の概観がしめされる。そこで絓はスーパーフリーを左…

リーブミー・アローン…

井土さんのイベントで阿佐ヶ谷の会場に行ったら渡された小冊子に鶴見済が写真付きででていて、最近の風貌は知らなかったからちょっと驚いた。『完全自殺マニュアル』って、ようするに「リーブミー・アローン」ってことだよな。オウム前に結論は出されて、そ…

『レフト・アローン』

正しいことの、正しさを引き受ける根拠がなくなってしまった。「大事なことのために、自分を捨てればいいじゃない」。もう捨てれなくなってしまった。そんなの、怖いわ。捨てて、しかし失いきることのなかった人々が出てくる。それは、そうだ。捨てて捨てき…

しかし、じつは、企業は注意喚起表記を嬉々として受け入れるべきである

と思う。各企業が「そんなことしたら自社製品が売れなくなる」と勝手に思っているだけである。そうした企業に雇われたリサーチ会社が、その思い込みにそった市場調査結果の報告を企業に納入するまでである。

「たばこは肺がんの原因とは決まっていない」

たしかその意味するところを養老がくわしく説いていたと思うが(養老って医師免許をとって、インターンをやったことはあっても、医師だったことは一度もないはず。「元医師」って何…)。つまり、たばこ以外の原因で肺がんになることはありえないことが実証さ…

うう…

自分の健康への気遣い無用としながら、見知らぬ他人の健康を気遣うあなたの心得何ならん。そんなに情報や知識が大切なのかね。早老症で生まれた人には「あなたはすぐに死ぬよ」とでも告知するのか。まるでブラックジャックのように。

要するに人間原理

世界超能力百科〈上〉作者: コリンウィルソン,Colin Wilson,関口篤出版社/メーカー: 青土社発売日: 1992/10メディア: 単行本この商品を含むブログ (1件) を見る図書館のこの手の本にひととおり目をとおさんばかりの勢いだ。やはり世代的にも、個人的にもこう…

幻覚の「像」

精霊は昼間だろうが夜だろうが、その姿をはっきりと幻視者の前にさらす。これは古代でも、中世でも、西洋はそうだったらしい。夢枕にたつなんてのもあった。幽霊というのは、精霊でも天使でもないのになんで出てくるの。そういうニュアンスもあったのかしら…

無意識万能論と行動主義

ポルターガイストの説明に、未成年者の無意識のなせる技というのがあったけれど、コリン・ウィルソンはこれに疑義を呈する。まあそうだと思うしかない。私は、大友克洋の未完の超能力短編「Fire-ball」や、『童夢』など、いま読むと絵がうまいだけにかえって…

「ほぼ安全に暮らしているが、恐れもある」

現代日本の天皇制は、制度ならぬ制度というべきものに収まっていて、一般人は気にしなければ空気のように見えないものだけれど、ないわけではない。なにしろ憲法の規定によって、その存在を国民が要請したことになっているのだ、現在も。西洋は、「はじめに…

ベルリン忠臣蔵

作り手は、たぶんクロサワ映画とかが、大好きなんだろう。音楽はヴァンゲリスのフォロワーか。フランケンハイマーは晩年に『Ronin』を撮っているし、彼らの琴線にふれる何かが忠臣蔵事件にあるのだろう。そういえばこういう雰囲気の長回しは廃れてきた気がす…

それだったら…

公平に、ドイツ人にも『舞姫』を批評してもらわねばならん。 冒頭は、篠田先生のわりと初期のハイビジョン合成。すこし前にフィルムセンターでフィルム版の上映も見たが、悪くなかった。

「原爆なめるな」のウソ

http://twitter.com/tonton1965/status/3100643187236864『トータル・フィアーズ』や『インディ・ジョーンズ/クリスタルスカルの王国』などの映画の、原爆の扱いが軽いことに文句を付けることが日本人の決まり文句になりつつあるけど、これって別に「原爆の…

愚痴が一定の様式を得ている国

日本は、愚痴が一定の様式を得ている国なのかもしれないなあ。言語に馴れ馴れしく、あるいはよそよそしく、つきあってきた希有な集団なのかも。なにしろ日本語の愚痴に相当する言葉が、英語には「ぶつぶついう(grumble)」とか「無為な不平(an idle compla…

神とは、礼儀にのっとったうえで、話が出来る

というよりも、話しかけなければ、それは信仰ではないのだ。日本には信仰をもったふりした不信心者がごろごろいる。自分は無神論者だといいきる度胸のある個人はなかなかいない。もちろんりきみかえってそんなこと宣言する必要もない。日本には草木にも神が…