2010-05-01から1ヶ月間の記事一覧

『全身小説家』

じつは高校生の頃、旧ユーロの公開初日に行って、原一男の舞台挨拶も見ている。次回作にフィクション作を考えてるなどの話をきいたことをおぼえている。あれが17年前か…。作品の内容をだいたいおぼえていた。私は世評でみなが驚くほどには井上の経歴詐称に感…

おっさんの内実が変わっていく

おれらがおっさんになっていくのだもの、おっさんメディアも変わっていくわな。

コージィ城倉が漫画ゴラクに描いてた

定食屋でひさびさにゴラクを読んだら出ていてちょっと驚いた。なかなか面白い。

『アヒルの子』

長男や長女は両親に反発してぐれて、そして次女だけがぐれそこねたので、長ずるにおよんでこういう映画をつくった、ということなのかもしれない。次男氏の訥々とした口ぶりとは正反対に、長男氏があまりに流暢に話すのが気になった。長男氏の土下座に次女氏…

『リア家の人々』

どうしても『ニレケノヒトビト』を連想するよな。北の小説をかつて橋本は絶賛していたし。砺波文三はもうひとりの本多繁邦なのかと思った。近未来小説としての『天人五衰』の拙さを橋本は指したことがあったから、今作はそのフォローという面もあったかもし…

思潮の変転(『リア家の人々』)

もともと学生運動というのは戦前からあるにはあって、しかし大衆を動かしたり大衆に知られたりするほどではなかった、どちらかというと青年将校の血気が知られていたくらいで、しかし戦後労働運動がまずおこって、そして学生運動が盛り上がってきて、1960年…

『日本文化論のインチキ』

『もてない男』から10年たって、小谷野さんがあの本こそは恋愛弱者論の嚆矢だったのだと念を押している。それ以前の散発的な先触れは小谷野さん自身が『恋愛論アンソロジー』に纏めてしまっているので、実際もそういうことになるのだろう(これは厭味)。私…

飲み込めんよ…

ユリイカの仲俣暁生の文章は承服しがたい。『桃尻娘』と『リア家の人々』が重ならないというが、読んでた人は(両作を隔てる時間の流れも体験しているのだから)重なると思うのだが。にっかつロマンポルノを「ポルノ映画」と呼び換えるのもどうかと思うし(…

『世界の終わりとハードボイルド・ワンダーランド』

読まないといいつつ読んでます。『1Q84』でも思ったが、創作についての喩え話が多いなあということ。喫茶店のマスター時代の経験を小説にするのはためらわれるのだろうか。

橋本治とユリイカ

ユリイカ2010年6月号 特集=橋本治 『桃尻娘』から『リア家の人々』まで…無限遠の小説家作者: 橋本治,宮沢章夫,栗原裕一郎,加藤登紀子,坪内祐三,小谷野敦出版社/メーカー: 青土社発売日: 2010/05/27メディア: ムック購入: 1人 クリック: 25回この商品を含むブ…

白髪をたたえたサリンジャー

我が父サリンジャー作者: マーガレット・A.サリンジャー,Margaret A. Salinger,亀井よし子出版社/メーカー: 新潮社発売日: 2003/04メディア: 単行本 クリック: 5回この商品を含むブログ (3件) を見るまだ読んでないが写真は見た。なんだか驚いてしまった。わ…

義手のない世界

えへへ、趣味で映画を見るの、二週間ぶりだぜ。帰還したって感じ。トム・クルーズ、地味な企画に入れ込んでたんだな。かえってスターの影響力がどのくらいのものか試せるから、地味な映画をつくるのは理解できる。いい映画だよ、これ。この映画のナチは、要…

『ライ麦畑の守護天使』

どうも裏側からキリスト教をえがいた小説だなと思ったのである。主人公のホールデンは、自分の身の回りから、順番に、友人やら教師やらが信頼に値しないことを説きはじめ、彼らから「解離」していく。学校を捨てて、家庭に戻る前に、都会に立寄り、「よりど…

共産党から嫁をもらうだ

週刊金曜日〈2006〉この日、集合。―「独話」と「鼎談」作者: 井上ひさし,小沢昭一,永六輔,矢崎泰久出版社/メーカー: 金曜日発売日: 2006/08/01メディア: 単行本 クリック: 9回この商品を含むブログ (5件) を見るこの本の22ページのくだりを読むと、井上ひさ…

村上春樹の『ライ麦』翻訳

「ぶちまけた話」は、「ぶっちゃけた話」か「じっさいのところ」か「正直なところ」あたりにしといたほうが良かった。「ぶちまけた話」なんて、16の餓鬼が使うわけないっての。

青春・パロディ・日本語・政治(井上ひさしの持ちネタの数々)

むしろペンクラブ会長就任など井上の社会的活動はこのあと活発化している。http://bit.ly/c9jYTy どちらかというと、井上の社会的活動が活発化したことに西舘がいらついてあの本が出たということなのだろう。それにしても井上夫妻(当時)の関係はワーグナー…

だから…

井上ひさしが遅筆だったことのほんとの理由がみえてくる…

恐ろしい本である

ライ麦畑のミステリー作者: 竹内康浩出版社/メーカー: せりか書房発売日: 2005/06/01メディア: 単行本購入: 2人 クリック: 4回この商品を含むブログ (1件) を見る『ライ麦畑でつかまえて』についてもう何も言いたくない―サリンジャー解体新書作者: 竹内康浩…

キューブリックは作家に嫉妬する

こりゃもう鉄板だな。どう考えたって『博士の異常な愛情』の原爆だか水爆だかの投下シーンは、『ライ麦畑』へのあてこすりであろう。後年のスティーブン・キングへの嫌味といい、キューブリックにはこういう陰湿な一面があった。しかし、砲弾にまたがって空…

ヴァージニティとイノセンス

『イノセンス』の登場人物たち、バトーも素子も、当然のことだがヴァージニティにはこだわっていない。これも当然ながら子持ちのトグサも同様。彼らは交わりの段階を過ぎてしまったから、もういちどイノセントで単性的な時間を迎えているのである。『ライ麦…

「伊豆の踊り子」

川端はノーマークだったから、あの薄い本全部が中編『伊豆の踊り子』なのだと思っていた。短編集だったのだ。それにしても素晴らしい。順序は逆なのだが、「紅い花」「もっきり屋の少女」などのつげ義春の世界を思わせる。なぜかしらないが主人公に話しかけ…

正直という徳目

しかしなんで西舘代志子(現)は離婚会見の時に井上ひさしの暴力について話さなかったのだろうと思うのだ。思うでしょ? しかもその場で「自分に正直に生きたい」と口にしてもいるのだから、これは何だろうと思うのだ。言わないことが「自分に正直」であるこ…

1960年代に頭角をあらわした人々の1980年代

というのも、ちょっと面白い。最相葉月の本からの連想だが。1957年デビューの星新一がボーダー例というべきか。それ以前に世に出た大江(星とほぼ同時だが、芥川賞だし)や石原慎太郎は、わりと安定した1980年代を迎えているが、井上ひさしや筒井康隆や小林…

川端康成「心中」と、野田昌宏によって最相葉月に語られた星新一によるレイ・ブラッドベリ「万華鏡」の要約

べつに星新一が川端康成を褒めたって何もおかしくはないのだが、しかしなにか引っかかる。で買ってみたのである。星新一〈下〉―一〇〇一話をつくった人 (新潮文庫)作者: 最相葉月出版社/メーカー: 新潮社発売日: 2010/03/29メディア: 文庫購入: 1人 クリック…

星新一の伝記番組

ウィキペディアには「98.05.29」の放送とあるから、最相葉月が取材をはじめる直前のころのものだ。作品「鍵」が重要モチーフになっているなど最相の評伝と共通点がある。それにしても、性や殺人を抑圧して人類絶滅については語るなんて、いやはや筒井康隆よ…

フロイトと一円玉(人は馬鹿にした対象に復讐される)

小谷野さんやkokadaさんのような既婚者が井上ひさしの家庭内暴力をしつこく話題にするのは何ならん。もともと井上好子が離婚会見を開いて「自分に正直に生きたい」と発言したら、呉智英などに指弾されたという前史があるわけだ。その釈明として告発本が出た…

ジャンプと炭坑のカナリア

やぶれかぶれ 第1巻 (ホームコミックス 本宮ひろ志傑作集 4)作者: 本宮ひろ志出版社/メーカー: ホーム社発売日: 1993/09メディア: コミック クリック: 2回この商品を含むブログ (5件) を見るやぶれかぶれ(1) (ジャンプコミックス)作者: 本宮ひろ志出版社/メ…

場所と心象風景

現実の人間は場所に拘束されるけれど、心にドメインはなかったりする。文章においてあくまで物理現実に忠実に書くと、それはどうしても報告書になってしまう。我を忘れる、あるいは他人の目があることを忘れる瞬間を、創作者は体験しなければならない。その…

『掌の小説』

こりゃあ、アニメだなあ。 と言っただけでは主観的すぎて読者に通じないから敷衍すると、背景の絵がなくて、キャラクターだけが動いているアニメ。描写(五感)と観念(認識)がめまぐるしく交代するあたりが、夢をおもわせる。夢を賛美しつつも夢そのままの…

親と私小説 星新一と吉田健一

http://d.hatena.ne.jp/jun-jun1965/20100516 星新一なら「殿さまの日」は、わりと「大人の小説」のうちかな、と。大人の小説だと思って読むと子供っぽいですが(あはは、いま確認したら文庫版の解説が武蔵野次郎だ)。星新一と吉田健一は、そういえば作家の…