2011-01-01から1ヶ月間の記事一覧

ドライトマト

昨日はやたら寒くて外出がおっくうなので家にあったドライトマトを齧りながら飢えをしのいで過ごした。『うるわしき日々』を読んだり、『一冊の本』で金井美恵子が味噌汁の具にトマトを選ぶことについて論ずるのを眺めたりしながら過ごした。で、今日はその…

あっ!

筒井としては、こういうことを言うことも、「文学」の営業品目に含まれていたのかもしれないなあ。政治家が個人情報保護を盾に出版を妨害することについて、筒井がわざわざコメントではなく文章を書いてこれを非難してフライデーだかに載せたことがあって、…

抗議活動は無意味

http://d.hatena.ne.jp/jun-jun1965/20110128 ハンガーストライキというのはデモンストレーションであって、仲間内の連帯感を強めて、自分らの意志をアピールするためにやるのではないですか。腹を減らして政府をうろたえさせる、のではなくて、腹を減らして…

いやしい、の思い出

偉いの反対語をふと思い出せなくなって難儀して、あとで、そうだ「卑しい」だと思い出して、そして不思議な気になった。子供の頃は親から「いやしいことをするな」としつけられたが、私は、「いやしいこと」というのを「意地汚いこと」「度を超して場違いな…

あはは、小谷野さんが小島信夫についてコメントしている

私はいちおう『うるわしき日々』にも目を通したいとは思っているが、たしかに小島の関心は「身辺雑記」的な、微細な差異に注がれがちなものであったのかもしれない。性の問題について、こう解かれても困る、と読者(私)が感じてしまうような傾きが小島には…

小島信夫『抱擁家族』

三輪俊介が私には冷たい人間に思える。まだ第一章しか読んでいないが、家政婦みちよの注進によって時子とジョージの情事が俊介に露見して、しかしその詳細が各人によってくいちがって俊介に説明される。俊介以外の人物の内面描写は行われない。俊介が妻をと…

さまざまなスクイーズ

なにをもって自分が搾取されていると感じるかは、人によってさまざまである。佐藤亜紀が文学賞の応募作の下読みの仕事をした話を軽くすませたことに私はなにかひっかかりを感じる。私の語彙でいえば、このとき佐藤は「平和ということの実相」に触れたのだ。…

出版社が似た小説を宣伝するために先行した作品を絶版にするなんてことがあるのかしら

http://ja.wikipedia.org/wiki/佐藤亜紀#.E6.96.B0.E6.BD.AE.E7.A4.BE.E3.81.A8.E3.81.AE.E9.96.A2.E4.BF.82.E9.80.94.E7.B5.B6.E3.81.AE.E7.B5.8C.E7.B7.AFしかし『鏡の影』という小説は出版社をかえて現役でありつづけているのだから、ようするにファンは…

信夫の心は千々に乱れて

小島信夫の時代論や文学論は、彼のエピゴーネンである高橋源一郎や保坂和志などがもう五十代をすぎて六十代に向かっている現在では、まじめに読むにはこちらのほうが飽きあきしてしまっているのだが、小島による先行作家の評伝やその作品にひきよせて自己を…

こうやってぼおっとしながらコーヒーを飲んでいる今も

宮崎のほうではニワトリがぼんぼん燃やされているんだよな。社会って不思議だね。

「自己」は「内部告発」の「内部」に相当するか?

そして、これは「菊池涼子シリーズ」つまり『美人作家は二度死ぬ』『中島敦殺人事件』のパクリだ、という妄想が始まる。(http://d.hatena.ne.jp/jun-jun1965/20110121) 「妄想へつながる」のほうが修辞としてはふさわしいような気がする。それにしても、佐藤…

「年齢の差を差し置いてみて」

「年上の者への礼儀をなおざりにして」の意味なのかしら。

江藤淳の「人間原理」

『自由と禁忌』のおわりのほうで、江藤淳は安岡章太郎の『流離譚』と島崎藤村の『夜明け前』を比較している。その前提として、それぞれの作者がともに同じくらいの年齢で仕事に着手し(五十代後半)、同じくらいの時間をかけて(5年ほど)、同じ時代をテーマ…

小島信夫「小銃」

新潮現代文学37の版で読んだから、巻末の著者略歴と照らし合わせて、創作が多く含まれているらしいことはわかる(暗号兵だった)。でも、小島が捕虜の処刑の場にたちあったことくらいはあっただろう。不倫のテーマがすでにあらわれている(といっても著者三…

小島信夫と高橋源一郎とテレビジョン

『現代文学の進退』に「なぜテレビのそばを離れないか」という文章があって、読んでいてふと高橋源一郎のことを連想した。ちょっと長く引用する。 私はある日テレビに自分がうつることになったとき、一応ことわったが、私が大へんにイバっているように思われ…

小島信夫

『君が代』が棚から私にうらめしげなまなざしをなげかけている。小島信夫『現代文学の進退』(1970.5)を借り出したのである。この時点で小島信夫は55歳である。教師家業をずっとつづけ、学園紛争に遭遇してもいる。期するところがあって、学生に「猫なで声…

精神分析がはやるというのがすでに出来レース、マッチポンプなのだ

火のないところに煙は立たないのか、それとも話に尾ひれがつくのが本当なのか、そのあたりはよくわからないが、とにかく、願望と言葉とが相互に交流するのが、ようするに人間の世界であって、交流自体が目的なのだから、言葉を分析して願望をとりだせるとす…

精神分析の時間

いかさんの『母子寮前』評が、どうも私の予想どおりに、いかさん自身の精神分析の材料となってしまったようである。普通は他人の家庭の事情になど、人は興味を示さないものである。それは、覗き趣味がはしたないからというよりは、言われたことが本当のこと…

こえー

うるわしき日々 (講談社文芸文庫)作者: 小島信夫出版社/メーカー: 講談社発売日: 2001/02/09メディア: 文庫 クリック: 13回この商品を含むブログ (29件) を見る 80を過ぎた老作家は、作者自身を思わせて、50過ぎの重度アルコール中毒の息子の世話に奮闘する…

一盗二婢三妾四妓五妻

「三妾四妓」あたりはうろおぼえだったので「一盗」で検索したのである。それにしても、小島信夫も江藤淳も坪内祐三も、なぜこの言葉を出さないのか。近代を超克しなよ。これ、ようするに「ばれたらやばい順」というわけ。家の外でよその家の平安をこわすの…

なあんだ

小島信夫は大学教授を定年までつとめていた(ウィキペディア)。もう完全に疑問氷解。前衛表現は安定した生活のネガにすぎなかった。こういうことは一番最初に読者につたえるものですよ、坪内さん。

『『別れる理由』が気になって』

http://www.amazon.co.jp/review/R3BN917DWDN7NS/ref=cm_cr_dp_perm?ie=UTF8&ASIN=4062128233&nodeID=465392&tag=&linkCode=この人が感心している「江藤淳にはフォニーであることのリアリティの自覚が足りない」というのは、坪内祐三のいつもの舌足らずで、…

形式主語を訳すかあらわさぬか

『アメリカ 村上春樹と江藤淳の帰還』のなかで坪内祐三は、”The Catcher in the Rye”の文中に頻出する形式主語Youを律儀に「君」と訳す村上春樹を、マーク・ピーターセンや加島祥造をひきあいに出して批判する。この箇所に不思議なひっかかりを感じながら私…

本音とされるものが建前("Phon(e)y")になるとき

アメリカ 村上春樹と江藤淳作者: 坪内祐三出版社/メーカー: 扶桑社発売日: 2007/12/07メディア: ハードカバー購入: 1人 クリック: 16回この商品を含むブログ (25件) を見る坪内祐三がちょっとずるいと思うのは、江藤淳が『自由と禁忌』のなかで、「ロックフ…

とはいえ

丸谷や村上春樹(丸谷は『世界の終わりとハードボイルド・ワンダーランド』を駒にして政治をやったことがある)などが、「ひとりあそび」をどれだけ複雑精緻に構成・構築できるかを追求する類の小説しか書いていないことは明白ですけどね。ふふふ、私小説こ…

『自由と禁忌』(江藤淳)

『裏声で歌へ君が代』を読み進める前にちょっと寄り道。冒頭の江藤家新築の話が示唆的だと思うのだ。これは、低成長時代がおわりバブルを目前にひかえたこの当時、江藤自身でさえ、ちょっと油断すれば丸谷や小島信夫や大庭みな子らのようになりかねないとい…

童心とモダニズム

このモチロンという怪獣のデザインをみて思ったのだが、『キン肉マン』の脇役超人たちのデザインは第二期ウルトラシリーズの怪獣たちに影響をうけているのではないかと。しかしそれは飛躍のし過ぎ、あるいは強引な一般化というもので、やはり直接の影響源は…

『裏声で歌へ君が代』

「カルチュラル・ショック」という語が見える。カルチャーショックは和製英語なのだろうなあ。「ラジオ・カセット」はどうだろう、ラジカセを正式名称ふうに表記するなら、ラジオカセットプレーヤーとかレコーダーと書くべきではないか。パーティー会場で梨…

放送と配信

NHKオンデマンドが配信する番組に課金するのを怒る人がいるが、そういう人の頭の中では「放送=放送された番組の内容」という等式が成立しているのだろう。「決められた時間のあいだに決められた内容の番組を流しつづけること」が放送であって、「享受者の望…

「そっちのほうか」

身分制かなにかについての話で小谷野さんは「時計職人の息子でなにが悪い」と言っていて、もちろん内容についてはそのとおりなのであるが、ついここで読者である私は、小谷野さんが父親のことを尊敬しているのだと勝手なはやとちりをしていたのである。そう…