『buy a suit スーツを買う』

感動した。

アニキのほうが、空回りしてる元天才、というのがいい。その元天才のホームレスの空理空論を、すこしはなれて、にこにこしながらながめる妹、というのもいい。

激昂をおさえきれない兄が、だされた料理をオモチャにするシーンが、行儀悪くてイヤだった。そういう演出なのだとしても。

2009年に、秋葉原と浅草を舞台にした映画を見ることが、こんなに胸に迫る体験になるだなんて、思いもしなかった。懐古趣味のかの字もない。兄は、インタビューで、こうレポーターに言えばよかったのだ。「そんなこといっても、俺、あんたの明日の姿っすから」。

なにを言っても仕方ない。兄の昔の女の述懐がいい。わたしたちは生き物で、しかも群れていないとだめな生き物なのだ。だから群れていくしかない。群れることに失敗してたとえ殺されることがあろうとも、そういうリスク込みで、その生存条件を受け入れていくしか道はない。出会わなければよかったなんて、いわないでくれ。