芥川龍之介殺人事件

松本清張の「芥川龍之介の死」(『昭和史発掘』)を読んだ(全集32)。芥川の「側近」小穴隆一の本などから、おもに芥川の情事関係をまとめたもので興味深い。清張が芥川賞作家であることを思うとちょっと可笑しい気もする。

 晩年の幻覚などは医学書カンニングしたうえでの狂言ではなかったかとし、清張は芥川を疑っている。これは面白かった。

 この考察を読むと、どうも芥川は褒められた人物ではなかったようで、風俗(性風俗の風俗)に詳しいことを友人に衒うあたりは正直鼻白んだ。清張が文章の末尾に「芥川のことをいろいろ書いたが」「芥川は永遠に夥しい読者をつかんでゆくだろう」と書き付けているのだが、清張さん、とってつけたようというのはまさにこのことですよ。