『異次元が漏れる』

私はひそかに現代のマンガを怖がっていて、自分でもその理由がよくわからない(少年期に漫画家志望で、その夢が破れたからという「分かりやすい理由」はある)のだが、この本を読んでなんとなくその秘密を垣間見たような気になった。リアルなものが絵になっている、つまり止まっているのが怖いのだ(手塚治虫の絵は全然怖くない)。(旧の名称だが)分裂症的な画家はリアルをもとめて絵筆をすててコラージュやインスタレーションに走ったりする。絵であることから逃避するわけだ。尾辻も絵から逃避して他人の印刷物(紙幣)を拡大模写することに意味を見いだす。精神的な危機を迎えた後(UFOを見たりもしたらしい)マンガに逃避したのは正しい選択だった。