『異次元が漏れる』
私はひそかに現代のマンガを怖がっていて、自分でもその理由がよくわからない(少年期に漫画家志望で、その夢が破れたからという「分かりやすい理由」はある)のだが、この本を読んでなんとなくその秘密を垣間見たような気になった。リアルなものが絵になっている、つまり止まっているのが怖いのだ(手塚治虫の絵は全然怖くない)。(旧の名称だが)分裂症的な画家はリアルをもとめて絵筆をすててコラージュやインスタレーションに走ったりする。絵であることから逃避するわけだ。尾辻も絵から逃避して他人の印刷物(紙幣)を拡大模写することに意味を見いだす。精神的な危機を迎えた後(UFOを見たりもしたらしい)マンガに逃避したのは正しい選択だった。
異次元が漏れる―偶然論講義 (1983年) (Lecture books)
- 作者: 秋山さと子,尾辻克彦
- 出版社/メーカー: 朝日出版社
- 発売日: 1983/06
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