ベリコフスキーの体温

ベリコフスキー(という表記が好きなのだ)の『衝突する宇宙』のなかで、ベリさんは、マンモスの氷漬け死体があることを、急激な寒冷化、天変地異の証拠として読者に印象づけようとしているけれど、かえってベリさん自身の生物の知識のなさを私たちに教えてしまっている。

氷点下の地域で哺乳類が活動していることなどままあって、かれらは食餌から化学変化によって体温を引き出している。だから、気温が低いことは哺乳類が生息できないことの条件とはならない。体を小さくして放熱効率をさげるか、逆に大きくして脂肪を蓄えやすくするか。もちろん生物は死ねばその体温は外気温と等しくなっていくから、環境が氷点下であれば、腐敗はおこりにくくなり、体の水分が蒸発する前に凍るほど早く「氷漬け」になることは珍しいから、マンモスの氷漬けも、見ると、それなりにミイラになったうえで凍っている。

そういえば、このマンモスの氷漬けを切って、解凍して、焼いて、食べてみた人は、いないのかしら。

衝突する宇宙

衝突する宇宙


急速冷凍した、「生きたまま凍った」バナナの例。釘が打てるくらい硬いそうだが…。釘の径と同じ幅の穴を木材にあけて常温で撮影しているだけだったりして…。