『裏声で歌へ君が代』

読みはじめる。『たった一人の反乱』を読んでいないので見当違いかもしれないが、非政治的人間の政治小説(箱の文句)というのは、なんだか吉田健一なきあとに丸谷がおもむろに吉田が嫌いそうな題材に着手した感じをうけるのである。丸谷は三島を低く評価しつつも、同世代だからか、感性に似通ったところがある。そういえば『笹まくら』なども、あまり吉田が好みそうな小説とも思えないが、生前吉田は丸谷の小説についてはどうコメントしていたのだろう。