長音表記

まえにここ(http://d.hatena.ne.jp/aureliano/20080901/1220256430)をみかけて気になっていたのだが、柳瀬尚紀が長音表記を省略する風潮に憂慮した発言について、誰かネットで引用していないかと浅く検索したのだが、望むものにはひっかからず。横着せずに図書館で本を見るべきなのだろう。

http://tammydaradara.blog49.fc2.com/blog-entry-133.html

ここを見ると、たんに文字数の経済のための省略で、それに柳瀬は怒っているのか、とも思う。私は「メニュ」と書いてあっても「メニュー、メニュウ」と発音してとくにこの表記について間違っているとかは思わない。

たとえばfreeが「フリ」だったらまずいと思う。フリィとかにしておけよ、と思う。

長音表記「ー」は対応する音がないからまさに記号で、なるべくそういう記号をなくしていきたい誰かの思惑から発している流れなのだろうか。

あるいは、長音表記に慣れずについ「ラメン」「チャハン」と書く外国人たちが運動しているのか。

私は20代の頃は言葉についてはあれこれ考えていたのだが、最近は、言葉というのは口語のことなのだとごく大雑把に割り切ることにしてしまった(ひとつのセンテンスに主格の「は」を5回も使ってしまった…)。文字というのは、便宜にすぎないのだと。個人的には文字を言葉とは看做さない。

私も20代の頃だったら菊池光の文体、語彙についてあれこれ言っただろうが、もうそういうことに興味はないのである。興味があるのは文章の中身だけである。クロフォードでもクローフォドでも構わない。Crawfordの音訳であることが読者に了解されていればいいのである。

呉智英平田弘史の劇画を復刻する際に長音の母音の「まちがい」(「そういう」を「そおゆう」と書く類)を、編集者の程度を示すものとして、修正したか指摘するにとどめたか、どちらか忘れたけれど、そおゆうことを呉智英が気にしたことを、私が気に留めたということがかつてあった。

http://page.cafe.ocn.ne.jp/profile/haruniwa/diary/201005#26

こちらでは「おかーさん」「おねーさん」という表記が標準になると予想されていて、まあそれは先の話だからどうなるかはわからないが、ふと思ったのは「おねえさん」は「おねいさん」にコンバァトできるけれど、「おかあさん」には代替音がないということ。

「かかさま」「ととさま」「ねねさま」あたりは「あり」だけれど、兄様はなんとする? 「ににさま」なんて言わないよね? 「にーさま」だけだ。

「いろいろあらーな」も、「正しくは」、「いろいろあるわな」と表記して「いろいろあらーな」と発音するべきなのだろう。消える魔球ならぬ、「消える子音」というのもありそうである。