私の文学観

他人の目を気にしつつ行われる客観性からの逸脱、というのがそれである。どの地域の文学も、だいたい詩や演劇からはじまっているのが面白い。詩は形式によって、演劇は観客によって客観性を担保したのであろう。

ルネサンスというのは、古代ないしは中世における「ポスト・モダン」なのだろう。その時代にあってあたりまえのことを踏みにじる、あるいは茶化す、そういう機能を当時は文学が担った。絵画はそういう皮肉を表現しえなかった。

ダンテがなぜわざわざ『神曲』などというものを書かなければならなかったのか、神や英雄ではなく、(彼にとって)近過去の人物を登場させなければならなかったのか、他人である私達にはさっぱりわからない。それは言い換えれば、客観性に乏しいということだ。