ディメンションの混乱
小谷野さんが『キルプの軍団』に触れていたので、しばし考えたのだけれども、後期の大江調のような映像作品ってあるのかなということである。なにしろ写像理論の提唱者としては、例外はあまり作りたくないのである。
すぐに思い浮かぶのは相田洋の電子立国シリーズである。映像の編集も相田が手がけているし(そうとう入り組んでいる)、さらには「エイリアンのラジオ体操」も相田の企画であろう。モーションキャプチャーのスタッフとのやりとりをそのまま流して、「こんなの聞いてないなあ」と相田がぼやきながらストリップを演じるところまでが、相田の狙いなのである。このあたりのユーモアは大江に通じるものがある。
私は大江小説の魅力というのは「次元の意図的な撹乱」にあるのだと思っている。そういう意味では、大江の作品はけっこう前からワンパターンであるともいえる。ワンパターンで、かつ魅力的なのである。