2010-02-06から1日間の記事一覧

『おとうと』

この映画をみながら数年前に死んだ父のことを思い出していた。「知識よりも知恵が大事だ」といいながら知恵のない人生を送った人だった。二十代の頃はそういう父をとがめる気持ちがあったのだが、いまはもうそんなことはない。人は死ぬ時に死ぬものだとぼん…

日本人は無意識ではなく意識をこそ発見しなければならない

ここらへんは西洋人と逆転しているのだ。本音と建前や嘘も方便の国では、かえって建前とは方便とは実際にはなんなのだろうという内省こそが必要なのだ。「本音と建前」という表現があるせいで、建前についての意味を社会が共有した気になっている。口にでき…

論理のモメント

かつて養老孟司が西洋人は言語を意識だと思っている(日本人は違う)という話をどこかでしていたけれど、いいかえれば欲望込みの自分(自我とは呼ばないでおこう)が社会に組み込まれてしまっているのが日本人なのだ。だから逆境にあうと「なんでわかってく…

『天皇制批判の常識』

瑕疵を発見。『クイーン』は2006年本国公開。日本公開は翌年。最後の最後に「もはや、黙って見守るしかないであろう」(198ページ)とあって拍子抜けしてしまった。皇室や、天皇制論議が、である。それならまったく付け加えることはありません。なぜ天皇制が…

自然と尊厳

たとえば、この大島のポートレートをみて言葉を失うのは「自然」で、でも作品はすばらしかったじゃないかと訴えるのは「尊厳」である。『おとうと』の鉄郎はそれとしらずに(つまり自然に)愛人の尊厳をふみにじったことを口走り、姉の吟子から頬を張られる…