「指腹」などというものがあった

江戸初期、十七世紀のわが日本では、さらに驚くべき方法が、武士の作法として行われていた。それが「指腹」にほかならない。(略)喧嘩口論の怨みが晴れない武士が、怨む相手を指名して(指して)切腹すれば、指名された相手も同様に切腹しなければならないとする武士社会の作法があった。喧嘩両成敗の法から派生した作法と思われるが、ある日突然、覚えもないのに「指されて」切腹を強要される場合もあるわけで、指された側にとっては理不尽な作法だったに違いない。

氏家幹人「復讐の作法」(文学界06年8月号)

死なずに復讐する方法があればいいのに…。