生きる
- 出版社/メーカー: 東宝
- 発売日: 2003/03/21
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黒澤の壮年期の作品だし、そんなに暗くないのは当然か。(「生きる」の発表後、黒澤は半世紀ちかく生きた)
志村喬が役のわりにあんまし老人ぽくないのには、さりげなく冒頭にいいわけがしてあって、「最近20年の主人公は生きているとはいえなかった」というナレーションがそれで、主人公の年齢から20引くと当時の黒澤と同年輩になる。
要するに、いま自分が死ぬとしたら、と、黒澤自身がシミュレートしているのだ。自分が何もしてこなかったことの後悔がテーマとなるのも、作者が壮年期にあるからである。
後半の会話劇に転調してからは、人は他人のことを本当に理解できるのか、というテーマがでてきて、これもまた「青臭い」。ほんとの老人だったら、そんなこともうどうでもいいよ、と言いそうな気がするが、黒澤は、半可通の登場人物たちに、主人公が突然発奮した理由をあれこれ推測させて、そのたびに反駁するのだ。
しかし、人は他人のことを本当に理解できるのか、というテーマは、よく考えたら相当に傲慢なもので、つまり監督と観客「だけ」が主人公の人生を知っていることになってしまうから。