カフカ

カフカのように孤独に (平凡社ライブラリー (265))

カフカのように孤独に (平凡社ライブラリー (265))

20世紀にいたって、文学は父の書斎で読まれたり母の退屈しのぎとして親しまれるほかに、子がその与えられた個室でひそかにつむぐ夢や希望としての側面をもつにいたった。

人間が、子として表現することで、無責任であることに詳細な記述を与えることができるようになった。

自分の品物を自由に処理しうる権利は、まだ失われてもいなさそうだったが、彼にとってはそんな権利はたいしたことではなく、自分のおかれている状態をはっきり知ることのほうがずっと重要だった。(「審判」辻瑆(つじひかる)訳)

大人にとって重要なのは「自分の品物を自由に処理しうる権利」に決まっている。そうでないと生活ができない。しかし子供にとって大切なのは「自分のおかれている状態をはっきり知ること」だった。現代人はこのまぼろしの目標を獲得するためにあがき、一世紀もの間自分の思い込みにふりまわされた。