まったく逆、そして正しい…

私達は江藤淳氏死すの報に接していたはずだ。それほど鋭い人物である。だが、彼は批評家だったので、死をまぬがれた。批評家は権力を指向することで自殺から救われる。逆に、権力を指向しない柄谷行人のような批評家は常に自殺と隣り合わせにいることになる。(村上龍アメリカン★ドリーム」より)

 江藤淳こそが純粋に兵士としての消耗品ぶりをまっとうに示したのだ。あの自殺はそういうことではないか。若き村上龍のただしい直感は、のちの自分と柄谷のありようの欺瞞を事前に裁断していた…。