土居健郎は「とめてくれるなおっかさんのポスター」に言及していた

 わたしが思春期をむかえたのは90年代だったから、土居健郎のこの本は、もうとっくに古臭くなった文化論というイメージがあって、しかも当時橋本治「蓮と刀」に衝撃を受けていたものだから、さらに土居の本を忌避したというのもあるのだが…

 しかし今回はじめて手に取った「「甘え」の構造」を読んでいて驚いたのは、土居は橋本のあの、とめてくれるなおっかさんのポスターに言及していたということだ。この本がでたのが71年で、「蓮と刀」が81年あたりだったから、10年後のアンサーとしては、当時橋本が30ちょっとの若さだったとはいえ、すこし感情的に過ぎたのではないか。土居の本への意趣返しとしての「蓮と刀」という側面もなきにしもあらずで、あれはもしかしたらそんな単純なことだったのではないかと、ちょっと呆然としている。