ドーキンス『神は妄想である』

逡巡があったが、やっぱり買って手元に置いておくことにした。序章を見ると、どうやらこちらの問題意識とは結びつかないまま、論が展開されて終わってしまいそうな気がするのだが。

不幸な人間がいて、嘘にすがるのだ。西洋社会のエリートが神を信じなくなっている、なんてドーキンスに説かれても、そりゃそうだろうとしか言いようがない。相対的には、彼らは満たされているのだから。不幸な人間をどうするのか、ドーキンスを問い詰めたい気がするのだが、相手はそんなの私(ド)の担当じゃないといって、この私の疑問をおいてけぼりにしそうな予感がある。しかし不幸の対応法を、つまり世界各地の社会環境をいったん度外視して、宗教の教義の矛盾を語ることにいったいなんの意味があるのか、けっきょくそれはアングロサクソンの手前味噌に終わりはしないか。

序章で現代のアメリカ人の信仰深さに目をみはるドーキンスのあつかましさには法外なものを感じざるをえない。イギリス人のおまえが言うのか! である。イギリスがかつて世界帝国だったころの人々の信心深さは、いまのアメリカ人と同じようなものだったであろう。アングロサクソンの世界帝国のイミテーションを立ち上げんとして敗れた黄色人種の末裔(私)は、白人の変わらぬ信念になかば呆然とするのだ。