それは素晴らしいことだ。それは取るに足らないことだ。どっちやねん。どっちでもあるんだなこれが。

まだ『神は妄想である』を読み終わってもいないのに、『利己的な遺伝子』を買ってきてしまった。面白い! 個体は誕生から成長、老化に至るまで変化しつづけるが、個体のレベルでは、当の個人そのものよりもDNAこそが不変の実体ではないか。池田流個「人」主義は、畢竟敗北し消滅する「どうせ消えゆく我が身」の、ごまめの歯軋りにすぎないのではないか。

私は池田のアジテーションを、国家に個人を対置する左翼的なものと受け止めていたが、なんということか、個人よりもDNAがより不変であることを認めたくない頑迷な「父」の繰言でしかないのでは、という疑いが、私の中にきざしはじめたのである。構造以外はDNAでさえも変化し流転し続けるのさという啖呵は、なあんだ、旧世代のヤケクソに過ぎなかった!!

国家は信じるに足りない。個人を信じなさい。そういう物語もいまや色あせはじめ、個人の善意も、ネットという暴走補助装置の助けをかりて、怪物の様相を呈しはじめている…。ああ、21世紀よ。