『深紅』

ぐわっ、超傑作。つか、デ・パルマに見せてやりてえな…。

オープニングから強調されるけれど、「家」ってほんと、日本の宗教だよねえ…。野沢尚の着眼点は正しい。日本の宗教に殉じてしまうと、個人が生きていけなくなってしまう。国「家」だとか「家」族だとか、そんなものは個人が生きやすくあるためのツールであって、逆ではないのだよ。私のいっていることがわかるか、迷信ぶかき旧世代の日本人どもよ。

映画ってのは、主人公を設定することで、商品となるわけだけど、もちろん現実には「主人公」なんていない。映画最大のウソとは、まさにそれであって、この作品はそのウソに果敢に挑戦している。内山理名が主人公だとおもっていたら、映画はリバーシブルのジャケットのように反転して、じつは水川あさみが主人公の映画であったことを、観客は最後に知らされる。内山と水川のキスの意味は、そういうことだし、塚本高史の描写がうすいのも同じ理由である。

社会だって、あるっちゃあるけど、ないっちゃない。あなたがいま目のまえにしているモニターほどにも「実在」はしないのだ。いやなやつとは関わらなければいい。関わらなければいけなかったら、それは、社会がまだ未成熟であるだけの話なのだ。ぬぬぬぬ、正しい、正しいぞ、野沢尚。自殺したのはもったいなかったな…。