『ブラインドネス』

登場人物たちの背景がほぼ描かれないから、感情移入できないまま、話が展開して終わるのをみまもるしかない。『28週後』は『トゥモロー・ワールド』より面白かったが、『トゥモロー・ワールド』はこの作品よりさらに面白い。

物語の場所は、架空の国ということでいいのかな。(厚生?)大臣が、アジア系の、それもそれほど高齢でない女性で、最初の登場シーンでSPにはっきり「大臣」と呼ばれているのに、私は大臣だと思わなかった。ロケ地はブラジルとカナダ。もちろん架空のアメリカに見せようともしていない。

謎解きの要素がないのに、いろいろ気になる描写があって、そのフォローがわざとない。なぜジュリアン・ムーアが最後まで免疫だったのかとか、教会の像や絵に「目隠し」をほどこしたのが誰なのかとか、教えて欲しい…。

スーパーでのムーアの行動も馬鹿すぎる。さきにエサとして、食料をばらまいて、盲人たちをひきつけておいたうえで脇から逃げればいいではないか。いちいち場当たり的でむかついたのである(あの男は殺して当然だと思うが)。たぶんそれも狙いなのだろう。ラストで一瞬、今度は私が…、と不安になるのは、「見えていた」ジュリアンが「実はいちばん見えていなかった」ことを示唆しているのかもしれない。見えていることに胡坐をかいて(周囲に秘密にしていたしな…)、実はいろいろ抜けている人物像を描いたのかもしれない。

Yusuke IseyaとYoshino Kimuraはともに端整だが、そのルックスの美しさは日本人の平均からはるかに外れているので、あれを日本人だと思われるとくすぐったい…。原作にも日本人がでているのかな。