貶めあう「愛情」(『その男、凶暴につき』)

夏が舞台だと思い込んでいたが春の話だった(みなジャケットを着用し、人事異動がある)。

ノーカントリー』を通過した今みなおすと、白竜の殺し屋ぶりが興味深い。ハビエル・バルデムとちがって、白竜は自分の残酷さ、凶暴さの根拠として岸部一徳に依存している。たけしが自らの凶暴さを平泉成のために発揮していたように。だからたけしは平泉が殺され、自分も襲われたことにたいする(白竜への)報復として岸部をも殺害したわけだ。自分の妹である川上麻衣子が白竜の死体に「依存」するのを見て、たけしは川上をも殺してしまう。愛情が嫉妬に変わり、ついには貶しあいに至ったわけである。

たけし演じる我妻刑事が、実年齢の役だとして、四十二歳で独身というのも、なんだか凄い。警察なのに。平泉も、友人の妹の心配ではなくて、友人そのものに見合いでもすすめればよかったのに。

中学生の頃、この作品と次の作品のセックスシーンには本当に衝撃を受けたことを思い出した…。