『卒業』をめぐる言説

映画自体は、けっこうマンガっぽいのに、なんで日本の映画マスコミは「名作」あつかいしてたんだろうかと思うのである。『卒業』は傑作ではあっても名作ではないだろう、誰でも感心するという作品ではない。日本人は、この作品が描く親の過保護、親の過干渉というテーマを直視したくなかったのかな? ベンの両親は、日本の馬鹿親じみた無反省な気質をもっていたし。でも栄誉あるアメリカのアカデミー監督賞だし、無視するわけにはいかないという葛藤が当時の日本人にはあったのかな。

エレーンの学ぶ大学街にやってきたベンがおちつく下宿のオヤジがいい。初対面で「主義者じゃねえだろうな?」と疑い、その後もベンと顔をあわせりゃ「出てけ」という。彼は、正当なる「世間」なのだ。