『天使と悪魔』

J.J.エイブラムスと比べると、ロン・ハワードはベテランだから演出に迷いがみられない。
 人の死、人が殺されるところへの興味が画面から顔をのぞかせているところがあるけれど、サム・ライミと同世代なのだから、普通、である。各国のマスコミにたいする揶揄も、それほど本気ではない。なにより、神を信じるかと問われたあとのラングドンの思慮ある受け答えがよかった。
 ついでにスター・トレックとの比較をつづけると、キャストもこちらはベテランぞろいで、悪くいうと華がない。前作のファンありきで、対象年齢もわりと高めに設定していそうだ。個人的には今作の方がバチカンを観光した気になって楽しめた。
 ダン・ブラウンの作劇は、実行犯が遠くで活動し、黒幕が名探偵のそばにいて、名探偵は知らずに黒幕と同伴して真相に近づくという点が、ダ・ヴィンチ・コードと共通している。話としては前作のほうが面白くて、原作は前作の方があとに出ているのもうなずける。