私の天皇論

現行憲法でも天皇の規定があるということは、現代の日本人も、大日本帝國が悪かったとは心の底では思っていないことのあらわれでしかない。天皇の意義を国家元首から国民統合の象徴に再解釈したことは、案外深いことなのではないか。戦後になって、「戦前」が「現在」の座を降りて「記憶」となった、思い出となったということなのではないか。

 小此木啓吾が昭和五十八年に書いた『家庭のない家族の時代』で、核家族の崩壊について語っていたけれど、大家族が「帝国憲法」で核家族が「日本国憲法」だったのではないか。そして「第二の敗戦」を迎えて、本当ならば核家族すら崩壊する現在にフィットした新しい憲法が書かれなければいけないのに、日本人はそれを書いていないのではないか、と。