日本という国

氏姓制度による集団化、早い段階で権威を外国にゆだねたこと、宗教を精緻化しなかったこと、どちらかというといたずらにバラエティを拡大したこと、いったん中国のような王朝を築いたけれどすぐにぐずぐずになったこと、武家支配がかなり長くつづいたこと、明治になって古代中国と近代西洋という二重の規範にひきさかれたこと、などがおもな特徴だろう。

歴史歴史というけれど、日本は植民地を持つ経験がイギリスなどより三百年も遅れていて、しかも失敗している。冷徹よりも愛憎をとうとぶ国。だから、権威を神ではなく外国に求めた。外国を権威に祭り上げることで、外国から顔を背けた。自我とか、利己ということを第一に考えない人々、民族。西洋人に負けるのは仕方ない。

『ベンジャミン・バトン』で、主人公が乗る船艇が潜水艦に突撃する。ここで、なんら悲壮にならないのが、要するに西洋だ。逃げるだけの早さがない。撃ち合うだけの武力がない。降伏はできない。なぜ突撃するのかの理由付けが淡々としている。これが、西洋。