他人の顔

映画版。原作にはなかった兄妹の話がいい。差別の話になるとどうしても鮮烈になる(なってしまう)。本筋のほうは、原作どおりのモノローグ演出になってしまうので面白くない。事故が、主人公がモノローグを垂れ流す権利を獲得する根拠になってしまう。

コートの生地の織りがくっきり見えるのが快感。むかしビデオで見たことがあるが、ビデオだとこの快感はない。

あるシーンで武満徹がレストランの客として背景にずっと映りこんでいる(あまりに長く映りこむので、はじめ笑顔で談笑していた武満はだんだん真顔になってくるのだ)。観客も気にしなければいいのだが、ここは、作品の謎掛けとしてちょっと面白い。話の筋に関係のない「他人」の顔を、あなたは、なぜそんなに気にするのか。

「皮膚」を練る油まみれのローラーの機械がもっともらしくて、いい。