植草甚一研究

この本に植草の「映画とエロティシズム」という文章が再録されていて(1953年3月上旬号(No.58))、内容の大部分は「”ピープル・ツゥデイ”誌」の「昨年十月二十二日号の「映画はセックスへ戻る」という小記事」と「”サイト・アンド・サウンド”(昨年冬季号)」の「エロティック・シネマ」の要約である。それ以外にも、「ライフ誌」の引用や、「”カイエ・デュ・シネマ”の昨年四月号」の「ジャン・ジョルジュ・オリオールの遺稿「映画における恋愛」」についての論評があったりする。もろもろ写真こみで7ページ。

植草自身は「フランス人にとってはフランス映画にエロティシズムはあまり感じられない」と書いていて、文脈をみると、グラマー美女を出すハリウッドのやり方とは違うという意味なので、おかしなことを言っているわけではないのだが、やはり表現としては舌足らずな印象を否めない。これは時代の違いもあるかもしれない。半世紀前の文章なのだ。ジェラール・フィリップの『肉体の悪魔』の写真を本編から9枚も抜いて並べたりしている。これが普通にエロいのであるが…。このフランス映画にエロがないというのもオリオールの文章からの受け売り臭い。

「エロティック・シネマ」の執筆者、カーティス・ハリントンの1952年におけるベストテンがウェブにあった。http://jdcopp.blogspot.com/2007/12/best-films-1952-critics-sight-and-sound.html