井上ひさしが面白いことを言っていた

例えば、宮本委員長の査問リンチ事件は、一口に言って戦争中という特殊な状況の中のことですから仕様のないことです。(井上ひさしによる松本清張との対談での発言 松本清張『発想の原点』双葉文庫211ページ)

民間人の殺人あるいは傷害致死が、その国家がしている戦争と何の関係があるというのだろう。しかし、本題はこれではなくて、189ページのあたり、「みんな死ぬんだぞ」と茶々をいれるのにも疲れて「みんなお祭り」と言い出す井上の心の変遷が面白いのだ。映画監督のフェリー二は早くも1963年の時点でこういう発想の先鞭をつけた。『甘い生活』の倦怠から『81/2』の祝祭への移行を井上が反復したのだ。こういうあり方が1970年代には一般化して陳腐化したというところだろうか。

対談集 発想の原点 (双葉文庫)

対談集 発想の原点 (双葉文庫)