理屈と観察
- 作者: 松本清張
- 出版社/メーカー: 文藝春秋
- 発売日: 2004/12/07
- メディア: 文庫
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あんなこと言ってて、でも面白そうだから、図書館の配架を待てずに買っちゃった。
朝鮮戦争は南、つまりアメリカ側から仕掛けたと清張は「推定」している。じゃあなんでコテンパンにやられて韓国軍は追い詰められたのよと思うが、北朝鮮をなめていたのだそうだ。う〜ん。
だれでも思うのは、坂本弁護士事件のときにオウムをつぶせていたらなあ、ということだが、オウム側の論理は、オウムに不利な証拠がいろいろのこる事件をオウムがやるはずがない、というものだった。しかし、そんなこといったらなんだって通ってしまう。白を黒にいいくるめるというのは、まさにこういうことで、1970年代に学生運動が終焉したあたりから今にいたるまで、日本人はこういう論理にすがって周辺の秩序を破壊し続けてきたわけだ(別に非難したいわけではなく事実の問題として)。こういう気分の醸成に、清張もまた一役買ったことだろう。日本人は敗戦をどう解釈したか。清張のように解釈したわけである。あるいは司馬遼太郎のように解釈した日本人もいるかもしれない。
清張の「陸行水行」という短編は、散々面白い推定をするだけして、いざその実証をしようとすると事故って死んでしまう人の話なのだが、いやはやますます大岡昇平の清張にたいする不満が私には共感されてしまうのである。