『レスラー』

ダーレン・アロノフスキーが零落したプロレスラーの話をやるのが意外な気がしたが、見てみると『レクイエム・フォー・ドリーム』を思わせるところ(怪我を手当てする「現在」と、その怪我をする様子を描く「14分前」との多少無理のあるカットバックなど)もある、監督らしい映画に仕上がっていた。

 劇中でもメルギブの映画『パッション』に言及していたが、アロノフスキーはずいぶん宗教的な映画作家なのだなあ。脚本がわりかし一直線で、人物造形も単純(とくに娘が)なのだが、キャラが立つのは主人公だけでいいわけだ。

 怪我の特殊メイクやセットなど映像がいい。まるでドキュメンタリーを見ているのではと錯覚する瞬間がある。マリサ・トメイもすばらしい。