『アバター』

タイタニック』でいまでもおぼえているのは、キャメロン自身の手になるそれほどうまいわけでもないジャックの絵や、ローズが斧をふりまわしてジャックを救出するといった、いってしまえば無駄なシーンで、それが映画の味になっていた。

 今回はそういう無駄がいっさいはぶかれて、要点のみがさくさく提示されていく。ちょっともったいなかったな。お金もかかっているし、キャメロンは利口になっちゃったんだろう。『タイタニック』は映画自体に愚行の香りがただよっていて、そこが好きだったのだが…。

 たしかに映像はすばらしい。しかし、何トンもあるはずのパワーローダーがスムースに動くのは(『トランスフォーマー』もそうだけど)、なにか間違っている感じを拭えない(どんな制動システムになっているというのだ)。『エイリアン2』のほうがよほど高等なことをやっていたと思うのだが。とはいえ、あたふた装備をすませて爆発と同時に脱出する大佐には笑った。『ダイハード2』で輸送機のコクピットから脱出する(輸送機に脱出装置なんてあるの?)マクレーンを彷彿としたのである。