「理系は精神分析をまともにとりあわない」とは

たんに、理系は「人生の意味」について回答しないというだけの話。べつに恐れ入るようなことではない。宇宙や地層やブラウン管に人生の回答が隠されているわけではないのは、文系にだってわかる。

またまたひきあいにだすのは晩年のフロイトだ。回復の望みがのこされているうちは喉頭癌手術の苦痛に耐え続け、望みがないと分かると卒として死に赴いた。つまり苦痛がいやで自殺したわけではない。このことの意味は科学では回答しようがない。私はこのことを尊いと思うし、立派だと思うし、容易に真似のできないことだと思う。しかし、フロイトの決断は科学的にはまったく無価値の判断だ。科学とはそういうものだ。