生きていることは生きることに先行する

江戸城大乱』で、坂上忍演じる徳川綱吉(将軍になる前)が乱行をいさめる堀田正俊三浦友和)に堅苦しい武家暮らしを厭うて吐き捨てる。「おふくろはおれにことわりなくおれを生んだ」。なんだか範馬勇次郎の誕生シーンを思い出してしまうが、生まれることは生きていることに先行する。生きることは生きていることよりもより抽象的な「観念」である。黒沢明の映画も、生きていた人の物語であった。