『キングダム/見えざる敵』

女子供もまきぞえにするテロリストは許せない? 日本の都市上空から無差別に焼夷弾攻撃やら原爆攻撃やらをしかけた連中がよくいうよ。とはいえしかし、佳作である。


なぜかしらないが、日本という島国の人びとは、世界を支配しようと思って海の外にのりだしたことのない人びとだった。太平洋戦争だって、「大東亜共栄圏」なんて、自分たちしか信じてない概念をふりかざしてアメリカをひっぱたいたヒステリーの発作のようなものだった。列強のまねごとを押っ取り刀(あわてて、という意味)でやってやけどした、考えないし、欲望もしない、ソフトな仏教国、それが日本だった。


中東とアメリカは、鏡をさかいにむかいあった人と、その像のように似通っている。支配層は強欲で、被支配層は敬虔で宗教を拠り所にしている。日本人の目からすればどっちもどっちにしか思えないが、その日本人はみずからのありかたをアメリカにあずけて、軽く気が変になってしまっている。


終幕の「ささやきの内容」を、監督は「どうだ!」といわんばかりに描いているが、私たちにいわせれば「なぁにを今更!」である。アメリカ人よ、現実界の砂漠にようこそ、としか思わない。しかし、彼らが砂漠に降り立ったことには意味がある。