財物の価値あるいは無価値

肛門性格についてフロイトがのべているのは興味深い。身体感覚が観念に投影されてたとえば金銭欲になる。たしかに金銭欲というのは不思議な欲だ。食欲や性欲の場合にそうであるようには、それに対応する身体感覚がないと思われているからだ。あるいはフロイトは、その通念を逆手に取って、金銭欲に対応する身体感覚を探したのではないかとも思う。


食欲や性欲は、しばしば言語を介さない。もちろん料理番組やポルノがあるのだから言語を介しもするのだが。しかし金銭欲は言語を介さないと、増えも減りもしない。タンス預金は盗まれさえしなければ、そのままだ。


貯めてることを知っているのは当人だけ。腹が減れば胃が鳴るし、性欲は顔に出たりする(まあ徴はいたるところにある)。これも金銭欲の不思議な特徴だ。だから他人の資産にはみんな興味津々なのだ。