一円でも一億円でも、妄想(ぶんか)は妄想(ぶんか)
映画の入場料が高いという批判は、あまり批判になってない気がする。同じ人が、テレビは惰性で見られるものだから、面白くならないと言ってもいるのだから、この人は結局何をいってるんだかと思う。
私は個人的に、映画の入場料は高いなと思っていたが、それは私にとって映画を見ることが強迫観念の対象になっていたからだ。ガスの元栓を何度も確認するのに、自分の手をすり切れるまで洗浄するのに、わざわざカネを払う馬鹿はいない。強迫神経症の患者だって、そこまではバカではないのだ。
いまの私は数をこなすことに価値を感じなくなったから、たまに見る映画に1,800円払うことにはなんの苦痛もない。
高いからとか安いからとかで物を買う人は、やはりどこか病んでいる、あるいは過度に健康すぎるのではないかと思う。値段で料理のよしあしを決めていた三島由紀夫のことをおもいださずにおれない。良いから高いのだ、というのは、一般人はついみすごしてしまうが、じつは倒錯している(ゆっくり考えるとわかる)。高いから良いのだと考えることは(安いから良いのだと考えることも)、これは一般人にも明瞭なほどに倒錯している。