さまざまな父たち

福田和也小林恭二の『父』をずいぶんな言いようで貶していたことがあって、先に小林著を読んだのか福田の評に興味を引かれて読んだのかもう忘れたが、まあいろいろ自分をかばっている様子はあったけれどよく書いてあったと思ったので、福田のいうことがなんだか不思議だった。

その福田和也が、何かの本で、高校の友人宅だったかの自室にルドンの本物があったことを驚いていて、ああ、この人は昔の人なんだなあと妙にしみじみしたりもした。生まれた時からカラーテレビだったかそうでないかで、人類は二分できるのではないか。福田よりさらに数年上の世代(そういえば、小林は安部公房にインタビューした経験を持っている。大岡昇平との面識があった島田雅彦をうらやんだ福田だもの、小林にたいする嫉妬でもあったのではないか)が、ああも熱心にニューアカデミズムを希求した心模様は、結局のところ、私なんかには想像もつかない。