『HANA-BI』

病院や銀行、バーそしてやくざの事務所に飾られる、たけしの絵は、「これは映画に過ぎない」というわかりやすいサインだ。これも10年ぶりくらいに再見したが、いい。泣いた。

テーマ曲、『シンドラーのリスト』に似ているなあ。ソ#ラレ、ファレ、ファレソラ。ラレラレ、#ララファラ、ファレ、ファソラ…。

「知らないおじさんとおばさん」が突然目の前で自殺したことに呆然とする娘の表情で映画は終わる。この女の子は監督の実子だそうで、「子供にたいする距離の取り方がわからない(自分が子供だから)」というのは、直後の『菊次郎の夏』、そして『アキレスと亀』にもひきつがれる北野映画のテーマである。

つい忘れていたが、西・元刑事はやくざにカネを返していたのだった。それなのに追いかけたら、そりゃ殺されて当然だわな。「いつまでも生きていられると思っているおまえらに死をくれてやる」。

何を描いたらいいかわからない、だから、異物の間の類似性を指摘することしか出来ない。お笑いというのも、そういう、物事をひっくりかえす論理の技術なのだった。

クレジットタイトルが縦書きでスクロールもしないのは、この作品くらいか?