『エホバの顔を避けて』

やっと途中まで来た。これは凄い。なんというか、心理学をここまで実践しているのも、珍しいというか。『虚人たち』よりもよほど超虚構しているなあ。「超自我(エホバ)」を、ヨナ(「わたし」)がまったく批判しないさまを、他人である読者、つまり私が読むことで(読者はヨナの精神分析の場に突き出されるようなものだ)、作者は宗教批判をこえた宗教理解を読者に提示している。

ヨナの宣教に感心にも聞き入っているのかとヨナに思われた浮浪児が、実はそうじゃなくてただの白痴で熱心な手淫の最中だったから話しかける預言者の話などそっちのけだったのだということをヨナが卒然と悟って呆気にとられるシーンは、ちょっと凄い。