『時をかける少女』(大林宣彦版)

通して見るのは、はじめてか、あるいは忘れてしまうくらい昔にしていたか…。前半はいろんなところ(チャンネル)でちょくちょく見かけていたのである。

タイムリープ表現で、大林の、若い頃のポップな実験映像の手法をそのまま持ちこんでいて面白い。かつていた場所の、しかしありえない視角が、間欠的に想起されていく。アルバムを手早くめくっていくように。時間旅行の表現としては、わりとマイナーな手法だろうと思う(これがオリジナルだといいきる自信まではない)。時間=映画=記憶の関係を知悉している大林だからできた、さりげなくも巧妙な手法。

その画面でこちらの主観が不安定にされると同時に、上原謙らの深町老夫妻が息子夫婦と孫まで自動車事故で失っていたことを知らされる。これは効いた。私は泣き出してしまった。

同一時間上に同一人物がふたり以上存在することはできないという、SF作法上の「屁理屈」を逆手にとって、「あなたわたしのもとから突然消えたりしないでね」を表現してしまう大林の老練さよ!