愚痴をきかされたくなかった蓮實重彦

http://d.hatena.ne.jp/jun-jun1965/20101219

大事なのは、丸谷才一じしんは別に徴兵忌避もしてないし、国学院大学に骨を埋める気もなかったであろうということだ。一介の自営業者としての自己をたんたんとリアリズムで描く小説をものする気はさらさらなかったということ。小説が主人公を要求し、ヨナや浜田を召喚した。
http://d.hatena.ne.jp/mailinglist/20100724/p2

蓮實としては戦争に行ったことがないから、行って帰ってきた人間(丸谷)の愚痴を聞かされたくなかったというに過ぎないんじゃないでしょうかね。「私小説でない小説がそもそもあるか」というのは相手に先んじてする開き直りとしか思えない。そういう蓮實が、『陥没地帯』や『オペラ・オペラシオネル』みたいなモロに西欧に憧れてかつわたくし性から遠い作をのこしている。「後進国的」というのも、丸谷が言われていやな言葉というよりは蓮實が言われて嫌な表現だろうし。

愚痴っていうのは仲間内で交わされれば、これほど楽しいものはないわけだし、丸谷は「内輪」を営々として構築してきたわけでしょう? なにも矛盾はない。

そういえば、『極東セレナーデ』の作家は、『女ざかり』の作家をどう思っているのだろう。忠臣蔵についての関心が同じ頃に表明された同士でもあるし、なぜおたがいに言及がないのか、ちょっと気になる。