『欲』(五所平之助)

これはいいタイトルである。タイトルだけに惹かれて観に行った。

渡辺文雄三國連太郎伴淳三郎森繁久彌と、私でも知っているような有名役者たちの若い頃が観られた。とくに三國のはじけ具合がよかった。

伴演じる科学者が不老不死の薬を開発せんとして、猫の睾丸からはじまって果てはヒトの睾丸までをも必要としはじめる。三國はこの科学者に心酔したふりをして、不老不死薬の巨額の利益をひとりじめしようと欲をかく、さびれた写真館の主人を演じる。

マンドリンバラライカの合奏がBGMで入るシーンがあって、ああ、この時代だなあと思った。私には『大怪獣バラン』でなじみ深い千田是也も登場する。『バラン』と『欲』は、同年の作品であるようだ。

この映画が公開された頃、筒井康隆は24歳前後だったはず。のちの「ホルモン」にこの映画が影響したのだろうか。映画の中でブロン=セカールの名に言及している。