そこで筒井の名を出すかね……。

 東浩紀が鬱という言葉を編集者から使うなと諭されたことがあったそうで、じゃあトラウマって言葉もつかっちゃいけないのと言っている。そして筒井康隆の断筆についても触れているのだが、しかし、筒井が同時に「作家なんて虞犯者の集まり」などと言っていることについて、東はどう思っているのだろう。言語を自由に使うのは、一般的な国民の権利などではなく、被差別者である作家という業を背負った者の特権である、というのが筒井の認識であったはずだ。

 もちろん東京なんぞトラウマの場所であるはずがない。トラウマの場所は双葉町であり大熊町であるだろう。