5刷の人の、五衰

 私などは、『偽善系』や『何でも買って野郎日誌』などを楽しんで読んで、『「学校へ行く」とはどういうことなのだろうか』などマイナー出版社のものは、著者から買ったものである(しおりがおまけで入っていたように記憶している)。

 『エースを出せ!』あたりで、とくになにかきっかけがあったとかではなく、自然に読まなくなっていった。この本はたしか単行本で買って、装丁が平野甲賀だった。

 どうも本当なら2007年のあたりで、気になる人は気になってしかるべき状況になっていたらしい。

 『少年リンチ殺人』や『そして殺人者は野に放たれる』なども、読んでみたいと思うが、私にとっての著者のイメージは、いまだに『ご就職』や『子供が大事!』などのものであって、四十代で早々に三人の子育てが終わったらしいというのは(三人ですよ)、驚異的であった。

 家族についての情報が断片的にとぎれなくファン読者にもたらされるのが著者の特徴で、こんどの騒ぎがきっかけで『折れそうな心の鍛え方』を覗いたら、ちょっと暗澹とするようなことが書かれていて、しかしディティールがないのである。これは困った。判断のしようがない。

 ツイッターで不適切発言をして、しかもそれをこまめに削除するという行為は、要するに「解離性遁走」の電子版なのだなあと思う。デヴィッド・リンチの『ロスト・ハイウェイ』は、解離性遁走を「主観的に表現した」映画作品だが、『折れそうな心の鍛え方』のおすすめ映画50選には載っていない(当然か)。

 私は似たような人として江川達也を思いうかべるので、怒る人が怒るようには、それほど「何で!?」という気がしない。江川の方は出し物が言葉そのものではなくマンガだったから、5刷の場合ほど多くの実在人が彼の対象になることはなかったが…。