自転車

きのう友人が、東京は自転車で移動するには諸々具合が悪い、という話をしていて、帰宅してから小谷野さんのブログを覗いたら、やはり似たような話題を書いている。


私は中学高校と東京のはずれのほうに住んでいて、自転車のヘビーユーザーだったが、都心のほうに越してきて、まったく自転車には乗らなくなってしまった。所有もしていない。


田舎の道を自転車で疾走するのは楽しいものであるが、都心は自転車にはなかなか不都合な環境だろうなと思う。住宅地を豆腐屋やら廃品回収の三輪車が通行するのなどは、これは趣のある景色だろうが、もうそういう風習も絶えたろう。 


もともと自転車的なものの通行を考えずに、日本の街は形成されてきたように思うのだ。それでは自動車はどうかというと、狭い路地にワゴン車が入り込むのなどは、私は、大八車のアナロジーでこれを観察している。視覚的にも障害物が多くて、込み入った東京の街を疾走するには、自転車は難しいように思うのだ。


時間を短縮することについて日本人は特有の、迷妄とさえいえるような性向を抱えているような気がして、たとえば、都心部の電車(つまり、そう間を置かずにつぎの車両が来る)に駆け込む乗客たち、かれらはいったい何なのだという思いがある。走らなくったっていいじゃないか、と。東京の街を、あえて自転車で疾走しようとする自転車乗りたちにも、私は似たような心模様を感じるのだ。