王兵(ワン・ビン)監督『名前のない男』

地面に穴を掘って、そこで暮らす男を、カメラは追う。その映像は100分近く続き、そして男は画面の奥へ去っていく。


どうやら男は気が触れているのか、それとも発狂しているのか、他人と交流する一切の意思を欠いているように見受けられる。画面外の、カメラマン、あるいは監督と、言葉、ないしはうめき声を投げかける瞬間はあるが、男は黙々と「生き続ける」。


穴倉に、箱も棚もなく、床面の土に食器を投げ出している。だから、食事は土まみれなのだ。この光景が、凄愴である。原始人というのは、あるいはこういうものだったのかもしれない、などという感想も浮かんでくる。


http://www.worldscinema.com/2010/05/bing-wang-man-with-no-name-2009.html